前回の本田商店さん、前々回の三和農産さんと島根の生産者さんをめぐる旅。どうやら島根には、有機や無添加にこだわったものづくりをしている生産者さんが多いらしい!中でも、あらゆる種類の有機・無添加の食べ物に詳しい人がいらっしゃるということで、今回は「別所蒲鉾」さんを訪ねます!

「自分たちが本当に食べたいもの」をつくるために、手間ひまかけた水産練り製品

ビオセボンの日本第一号店・麻布十番店をオープンした2016年からお付き合いがある、別所蒲鉾さん。冷凍のほか、仕入れたての生のお魚から、蒲鉾やちくわなどの練り加工品をつくることのできる施設も持っています。

山陰の海がすぐ側に広がる工場では、おいしそうな練りものが次々と袋詰めされていきます。元は漁師町だったという地域で長年、お魚を加工しています

別所蒲鉾さんは、化学調味料、保存料、着色料など味や見た目にかかわる工程において無添加に取り組むだけでなく、素材を加工する際のコストや手間を削減するために多く使われている“見えない部分”の添加物すらなるべく使わない工夫をしているという、こだわりの工程を持つこと。その分手作業の工程や作業が多く、手間ひまをかけてつくられています。

それでもポリシーを貫く理由は、「自分や家族が食べたいものを作らないとあかん」と思ったから、と別所蒲鉾の社長・竹並一人さんは語ります。

竹並さんは豪快でありながら、食の安全に対してとても真摯に取り組む、島根の食を語る上で欠かせない存在。私たちにも勉強になるお話をたくさん聞かせてくれました

「うちは3代続くかまぼこ屋さんです。島根には古くから「祝いかまぼこ」という文化があって、うちもずっと昔から贈答用のかまぼこを作っていました。松竹梅などのおめでたい形をかたどったかまぼこで、これを配ることで「祝い分け」、つまり、幸せのおすそ分けをするというわけですね。

ただ、それらには合成着色料などが使われていたわけ。自分が20歳の時に父を亡くし、工場を継いでから、結婚して子どもが産まれて…と暮らしていくうちに、添加物を使うことへの疑問に答えられない、これではいけないと思ったんですね。家族用にほんの少しだけ無添加のかまぼこをつくっていたんだけど、それをあるところから『製品化してほしい』と言われて、それから本格的に取り組むようになりました。納得できる大量の無添加素材を探し出し、自然な味に仕上げて、日持ちを良くすること。この3つを兼ね備える製造をすることが、一番苦労した点ですね」

でんぷんも不使用。なのにかまぼこをこれだけ曲げても割れないのが、新鮮な魚を使っている証拠なんだそうです

竹並さんは無添加へのこだわりだけでなく、原料のトレーサビリティにも配慮。理想の練り物のつなぎを探すために単身、北海道へ3ヶ月赴いて、やっと1か所、お眼鏡にかなうものを見つけて帰ってきた…なんてこともあるそうです。「安全なもの」を探求する姿勢や経験が、かなり深いものに感じられましたが、なぜそこまで素材のよしあしを確かめられるのでしょうか?

無添加のかまぼこをつくるために、2代前の戦前のレシピをあたって研究

「無添加のかまぼこをつくることができたのは、うちが3代続いているからというのが大きいね。添加物というのが出てきたのは、 何十年か前の話。つまり僕のおじいさんの代は、添加物がない時代だったんだよね。だから、添加物を使わないレシピがあった。僕はそれを見て、必要な素材を探していったんです」

ビオセボンで年末年始に販売する紅白のかまぼこもリン酸塩、保存料、化学調味料は一切使用しないこだわりの一品。赤色は自然の紅麹を使って着色しています。紅麹は光に弱いため、日光や蛍光灯に長時間当てると色が褪せるのですが、それこそが自然な色のしるしなんだそうです。

こうして見ると、赤というよりは「紅色」といった感じの、しぜんな赤色です。賞味期限も1ヶ月ほどあるので、あらかじめの買い置きにもおすすめ

他にもフムフムと興味深かったのは、竹並さんに島根の他の生産者さんの話をすると、「あそこの息子は元気だったか?」「あの工場の特徴は…」と、色々な方の歴史や頑張っているポイントを教えてくれるのです。聞くと、竹並さんは食についての目利きなだけでなく、生産者さんを紹介したり、アドバイスをすることもあるそうです。その様子は、出雲大社のお膝元で、まるで有機や無添加の“縁結び”をしているかのよう!

それにしてもなぜ、島根はこだわりの生産者さんがこんなにもたくさんいらっしゃるんでしょうか?そんな質問にも、竹並さんは「島根は、正直に作る人が多いから。それにもともとある自然がすごく豊かで、みんな我欲がないからかな」と即答してくれました。そして、「だからそういう人たちが、損をしないようにしないとな」ともおっしゃっていました。

食への意識がアップデートされていく生産者を、ぜひ応援してもらいたい

「いずれは、老人食や離乳食で無添加の食べ物を作ってみたいですね。和食で無添加って、なかなかないですから」と語るときの目が、とても優しかったのも印象的!

「僕は、良いと思ったらその人にいろんなことを紹介してあげたい。だから人やものをつないだりといったことが仕事になってるね。フィクサー?(笑)そんな大層なものじゃないけれど。未来につながっていって、有機とか無添加が広まっていけばいいと思ってます。

食べるもの全部をオーガニックにするなんて、僕だってお金がいくらあっても無理ですよ。だけど、たまに1食は気を遣ったものを食べてみようとか、そんなことでいい。少しずつ食生活に有機や無添加が浸透していけばいいなと思います。

だから消費者の方々には、ぜひ島根の生産者を応援してもらえたらと思いますね。生産者さん自身も、食についての考え方はこれからどんどん変わっていく。ぜひ、そういう頑張っている島根の生産者さんを応援してもらいたいなと思います」

無添加についての知識や有機を取り巻く人びと全部を応援するような、あたたかくて力強い竹並さんのお仕事。とっても素敵でした!こだわりのかまぼこを通じて、竹並さんのメッセージがたくさんの食卓に届くといいなと思いました。

おすすめアイテム

別所蒲鉾
無添加のどぐろ入り蒲鉾 紅白
山陰名物の高級魚・のどぐろを、こだわりの魚肉すり身や鰹・昆布のだしなどと合わせた独自の製法によるかまぼこ
別所蒲鉾
迎春用 魚旨 紅白
おせちやお祝いの席に欠かせない紅白かまぼこをセットで。味付けには昆布だしや鰹など、自然そのままの食材を使用しました

※写真はイメージです。
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